88期繋がり?で、リュシアン@みーちゃんいっときます。


TRAFALGAR、東宝千秋楽。
春風弥里は見せつけてくれた。
リュシアン・ボナパルト。
その役の、集大成を。

じゃなくて。

「オレが公演中に思い付いた、オレのかっこいいポーズ」の、集大成を(えええ?)

いやもうびっくりした!忙しいのなんのって!!

みーちゃん大変~~~!(笑)

少ない出番の中で(ほんと少ないんだよなあリュシアンとしては)、前髪は払わなきゃないし、カフスは直さなきゃないし、顎に手は持ってかなきゃないし、あと指っ!
楽の3日前に、突如思い付いた(笑)んですよねこの指。
なんて言うのだろう……頭の中で考えている「あれをこうやって、そうやって、うーんそれから」っていうのを指で形にするような、弧を描くみたいな。

∞(ムゲンダイ!)

(笑)(笑うな)

それを楽は、景気よく出しまくってました。

すんごいことになってるよ!(いろんな意味で)(え)

とにかく今まで思い付いた全ポーズやっとこう。みたいな。
ああ基本的に難しいことは考えてないんだわこの人。みたいな。

トラファルガーという作品に於いて、大劇初日から東宝千秋楽の間でいちばん人格変貌を遂げたのは、実はリュシアンだと私は思っています。
最初は絶対にあんな人じゃなかったもの!
行動的な兄ナポレオンに対し、理性的な目でそれを見守り、かつ支える、知性派の弟。
ナポレオンの参謀、ボナパルト家の頭脳。
ただしあくまでも上品で、色としては白。

が。しかし。
日を追うごとに、どんどん黒くなってゆくリュシアンくん(笑)。

公演前の歌劇座談会で、齋藤先生は「(兄と弟)二人の這い上がっていこうとする野心」「その二人の考えが次第に違ってきていずれ確執に繋がっていくであろうという前兆まで見えたら」「いつかは自分も兄に負けないヨーロッパの国々を掴み取ってやろうと」という言葉を出していますが、実際に現場ではそんな演出を付けるまでの手が回っていなかったと予想(笑)。

大劇当初のリュシアンは、兄に忠誠心を持って仕えていたはずです。
兄を超える気など、さらさらない。あくまでも支え。野心を持っているのは兄のほうだけであり、むしろそれが走りすぎるのを抑える役目。
そういう役づくりに見えました。

どこで野心を持っちゃったんでしょうリュシアン、じゃなくてみーちゃん(笑)。

つか台詞だけで見ると、リュシアンって掴みどころのない、どうとでも演じられる人なんですよね。だって説明台詞しかないじゃん!
「歴史上の人物」ではありますが、トラファルガー海戦前までナポレオンと行動を共にしたりと、史実自体も変えられてますし。

そしてみーちゃん驚愕の天然発言。
「歴史上の人物って言っても……私、会ったことないので分かりません(ニコニコ)」
ええええええ??!

最初は、掴みどころのないまま演じていたのかもしれません。そうすると、次第に役者の持っている色が出てくるんだろうと。

ここで、リュシアンが企みキャラになったんじゃないかと。

みーちゃん自身が企みキャラなんだわそれ(素)。

考え抜いた結果というよりはおそらく、本能の赴くままです。あの芝居は。
素直にやったら、黒いの。ジトジトねちねちしてんの。いかにも企んでそうなの。みーちゃんは。
それで深く考えず出したポーズに、目線に、観客側が勝手に「意味」を見出す。
今度はみーちゃんがそれに乗っかって芝居をする。そのことによってその「意味」が、より前面に打ち出される。
それをまた観客側が深読みし、さらにみーちゃんが乗っかって……という形で、どんどんリュシアンが黒くなっていったと思うの(笑)。

最終的には、兄の地位など乗っ取ってやると言わんばかりの企み男、もとい、壮大な野望を抱く青年になったのだから、みーちゃんてば不思議な役者だわ……。

東宝の、リュシアンがオーレリーに耳打ちしてニヤり……の追加によって、大劇に比べてリュシアンの企みっぷりが強調された、というのもあると思います。
これも、みーちゃんの芝居が変わっていったことによって、(オーレリー萌の)サイトーくんが、急に思い付いたんだと思ってるけど(笑)。実際にあれは、東宝の舞台稽古で急遽追加されたものだそうです。

顎に手をやって「ウィ!」は、GOGO5で樹里ちゃんがネタにしたことによって公然のポーズになってしまいましたが、公演の途中で思い付いたんだよね。
いかにも腹に一物ありそうな、「ウィ!」の一言に籠められた策略を垣間見せてくれるポーズですが、最初はやってなかった。ただの直立ウィ!(笑)
そうやって樹里ちゃんが褒めてくれた言葉に乗っかる。そんな繰り返しで芝居の方向性が定まっていく。

いえ、いちばん驚いたのはカフスですけど。えー言っていいのかな?(でも言う)
オペラ座のあとのカーテン前芝居、リュシアンの登場はカフスを直しながらなんですよね。
でもこれは大劇の新公で、かけるくんがやったの。それがリュシアンとしては最初のはず。みーちゃんはやってなかった。

えーと、新公終わってからの公演では本役リュシアンが、オペラ座のあとカフスを直しながら出てき……あれ?あれれ?
それ、かけるのパk(自粛)

じゃなくて。無意識だと思います。無意識下の意識に、かけるの仕草が残ったんでしょう。
それがあるから、なんとなくやっちゃった。だけの話なんじゃないかと。

みーちゃんすげーって思ったのは、大劇の終わりも終わり(よーは新公後だから)になってやりだしたそのカフスいじりを観た観客側から、「あれの意味するところは」という声が頻出したときです。いろんな解釈がありましたし、また私も考えさせられた。
観るほうに深読みさせるような芝居になってるんですよね。だから観客が勝手に、それに意味を見出す。

多分、みーちゃんはなにも考えてない(ごごごごめんなさい)。
黒燕尾でカフス直すぐらいの意、まあ「オレってかっこいい」だわ。

実は何か考えてそうなその芝居は、実に何も考えてない。

でも、そこに何かが見える。何かを見させる。

のだとしたら。


それって天才ってことじゃないの?(素)


ディックのように元キャラがあるわけではなく、ゲオルグのようにいわゆる類型的な役ではなく、新公時代のようにお手本があるわけではなく、そうなると意外とテキトー、もとい、掴みどころのないまま最初は演じてしまうものなのではないかと、これがリュシアンを見続けてきた素直な感想です。

それで「何か」を打ち出してきてしまう、口で語らずともその濃いキャラで「言葉」を語ってくれる春風弥里という人は、やはり本能的な役者という動物なんだろうと、これも素直に感嘆しています。

もっと素直に言いましょう。


この人、やっぱ天才だわ……!!


その芝居の基本にあるのは「いかにオレがかっこよく見えるか」だもんな(笑)(そしてそれはジェンヌとして男役として正しいのだ、多分ねっ)

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